満州に夢を求めた日本人達・虹色のトロッキー①

安彦良和氏の描いた「虹色のトロッキー」
安彦良和近現代史3部作と言われている作品の第一弾。
安彦良和氏といえば言わずと知れた「機動戦士ガンダム」。その作画をしていたアニメーターだが、安彦良和氏の目は未来のみならず過去にも向けられていたようだ。
この作品は1990年~1996年に描かれている。
日本中が浮かれていたバブルの末期頃に連載が始まっているのだ。
多くの日本人が「未来」しか見ていないこの時代、しっかりと「過去」を見ていたということになる。


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日中戦争真っ只中の昭和13年6月から昭和15年8月頃。主な舞台となるのは満州を中心とした広大な大地。日本軍兵士として生きた日蒙混血児である青年ウムボルトを主人公とし、テレビなどでは中々日の当たらない時代を描いている。
当時としては異色の作品だ。
作中では石原莞爾や辻正信、甘粕正彦、川島芳子、李香蘭など実際に満州で生きた人物達が登場する。
それらの人物がウムボルトの人生に大きな影響を与えていく。

作品の内容を全てお話しする事はここではしない。それはウィキペディアにでも任せておく事にする。

作品の印象としては、後に描かれる2作と共に、史実にフィクションを絶妙に織り交ぜている。
これをやりきる安彦良和氏の力量は凄い。
この(おそらく)架空の人物であろうウムボルトがあまりにも上手く溶け込み過ぎていて、これが史実かと思わされてしまいそうになる。


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私は「満州国」という多くの日本人が夢を見た短命国家に強い興味がある。満州関連の本は何冊か読んで、ある程度の人物像は把握していた。
ところが、この漫画の事を知ったのは10数年前。それまで安彦良和氏が普通の漫画を描いている事すら知らなかった。
しかし、そのおかげで登場人物を知っていたこともあり、「この人をここで絡ませるか」と、かなり楽しく読ませてもらえた。
題名の「虹色のトロッキー」というのもソ連邦・スターリンによって失脚し、国外追放となったトロッキーがウムボルトの両親の死に関わっているという設定からきている。
追っても追っても虹の様に捕まえられそうで捕まらない。どれが本当の色なのか、そしていつか消えてしまう相手ということなんだろうと勝手に理解している。こんなタイトルの付け方も上手い。

兎角(とかく)、日本人は明治維新・日清戦争・日露戦争・日中戦争・大東亜戦争(太平洋戦争)を個別に見てしまいがちだ。が、後に紹介する「王道の狗」「天の血脈」と合わせて全ての歴史がつながっている事を感じさせられる。

最後に私はこの作品を文庫コミックで持っているのだが、文庫コミックには正規のコミック本にはない当時の写真が載っており、作中に登場する人物の写真と安彦良和氏の描いた人物とを見比べて、その特徴を捉えた作者の考察力をみるのも楽しませてくれた一因だと思う。
下にその例をいくつか貼っておく。

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辻権作少将

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ウルジン・ガルマーエフ将軍

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辻 政信陸軍大佐

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甘粕 正彦陸軍大尉・満映理事長

やはり「安彦良和」は特別な能力を持った人なのだ。 


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